Google、Apple、Facebook、Amazon、4社を合わせて「Gang of Four」(もしくはGAFA)と言われます。 これにMicrosoftを加えた5社が、現在のデジタルマーケティング環境に与えた影響は無視することができません。
「Gang of Four」が生んだ現在のデジタルマーケティング環境
Googleが変えた、インターネットのユーザー体験
約20年前のインターネット黎明期。 「ネットサーフィン」という言葉がまさにその言葉の通りで、 意図をもって情報にたどり着くことは難しい代わりに、 思いがけず期待を超える情報に出会う機会は豊富だったように思います。 むしろ情報検索が主ではなく、 そういった情報の海に飛び込む「サーフィン」自体が目的だったりして。
情報を整理しつくすGoogleが全てを変えました。 Googleの高性能な検索エンジンがインターネットの導線を「単導線」に塗り替え、
自ら期待する情報以外の思いがけない出会うユーザー体験は減っていきました。
Facebookが生んだインターネットの「島宇宙化」
次に出てきたのがmixi、FacebookなどをはじめとするSNS。 ある特定の場や人間関係を設定し、 その場のなかで情報のやり取りをすることが増え、 ますます自分の期待の外にある情報に出会う機会が減ります。
自分の趣味・関心においてしか情報の収集・発信をせず、 興味・関心を同じくする者同士でグループ化する状況は「島宇宙化」と表現されますが、 Facebookに代表されるソーシャル・ネットワークは、インターネットの「島宇宙化」を進める方向にあります。
広告偏重のデジタルマーケティング
これらのGoogleやFacebookがリードしてきたインターネットというマーケットプレイスにおいて、 彼らが提供するデジタル広告を活用することで成長してきたのがこれまでのデジタルマーケティング(というかプロモーション)でした。 実際、GoogleとFacebookでアメリカのネット広告市場の72%を占めています。
- 検索連動型広告をはじめとする、広告の単価高騰。
- ターゲットとするユーザーリストの枯渇。
マーケッターがデジタルマーケティングで苦戦を強いられているとすれば、 その一端もこのようなインターネットの「単導線化」「島宇宙化」にあるのではないかと思います。
しかし、こういった状況の強化に片棒を担いできたのはまさにデジタルマーケッター自身でもあります。
数字で成果が簡単に可視化されるデジタル広告を重宝し、 顕在化したニーズに対する刈り取りやセール等による需要喚起プロモーションばかりに注力することで、 エンドユーザーに対して「期待を超える出会い」を提供する努力を怠ってきたとすれば、 そのツケはアドブロックの趨勢などにより確実に現実化しつつあります。
次の戦場は新しい顧客インターフェースに向かう
ここに来て、「Gang of Four」の競争は激化しているとの主張もあります。
「ハッキング・マーケティング 実験と改善の高速なサイクルがイノベーションを次々と生み出す (MarkeZine BOOKS)」の著者でchiefmartec.comのScott Brinker氏によると、Google(Alphabet)、Amazon、Facebook、Microsoftが他企業を締め出すとともにこれら企業間でも激しい競争を繰り広げているのには
- Marketer
- Service Providers
- MarTech/AdTech
- Internet Service
- Client Interface
- Consumer
で構成されるバリューチェーンにおける垂直統合を強め、自社の優位を確実にする狙いがある1^、と言います。
事実、GoogleのOptimize360リリースでLPOベンダーに震撼が走ったことは記憶に新しいですし、 「Gang of Four」の間でも下記の通り、各社が合従連衡を繰り返しながら顧客インターフェースを獲得するための競争をしている様子が伺えます。
- Appleに続いてGoogle、Amazonもテレビに参入。同時にAmazon Fire TVではYoutubeが閲覧できなくなった
- Apple、Google、Amazonがスマートスピーカーに相次いで参入
- Microsoft、FacebookはVRに参入
個々のマーケッターの創意工夫を支援する「MarTech」
一方、マーケティングオートメーションによるリードナーチャリング等への着目などマーケティング活動の重点は確実に変わりつつあります。 マーケティングをデータ・ドリブンで実施するインフラが整ってきたことによって多くの企業でマーケティング予算の重心も 広告偏重の「マーケティング・プロモーション」から、 リードジェネレーションとそこからのMA/CRMなどによる「マーケティング・コミュニケーション」といった施策に少しずつ変わりつつあります。 もちろんそこにおいては「Gang of Four」間の競争によって生み出された新しい顧客インターフェースの波との接続も不可欠でしょう。
これら新規領域にあたっては、個々の企業のマーケッターの創意工夫です。
エンドユーザーに対し、「期待を超える出会い」を提供しようとする全世界のマーケッターの企みは、 単に自社の商品・サービスを購入させるだけでなく、 ひとびとの認識世界の外のものに目を向けさせ、その認識を拡張するきっかけを作るものでもあります。
そういった模索を支援するのが「MarTech」です。 その意味でMarTechの成長こそが、「Gang of Four」によるユーザー体験の寡占を相対化し、 多様なユーザー体験を創る担い手になりうるのではと考えています。
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