TOKYO MARTECH BLOG

MarTechのトレンドや要素技術、各種サービスについて取り上げて紹介していきます。

データドリブンによるセレンディピティの可能性

マーケティングにおける「最適停止理論」

「最適停止理論」とは、期待報酬を最大化したり期待コストを最小化するために特定の行動をとる最適なタイミングを選択決定する理論。 よく使われる例は、恋人を探す求婚者で、TEDでも紹介されています。ある候補者とデートをしたら、決断を迫られます。まだ探し続けるべきか、それとも理想の相手(少なくともそれまで会ったなかでは)が見つかったとして探すのをやめるか。

これはきわめて現実的かつ切実な、探求か深掘りかの選択となります。

マーケティングにおいても同じような課題領域が存在します。 あるエンドユーザーが旅行を検討しているとして、ある旅行先候補に出会ったときにそこに決めるのか、もう一度探し続けるのか。最適なバランスはユーザーの置かれた状況によっても異なります。 企業側はユーザーが各候補をどれだけじっくり探求するか、そこから一覧に戻ってくるか、どんなタイミングで戻ってくるかといったユーザーの行動を参考に、商品の陳列やレコメンデーションにおける探求と深掘りのバランスを調整することとなります。

探求と深堀りのバランス

この探求と深堀りのバランスを個々のユーザーに決めさせている企業もあります。 「アマゾノミクス データ・サイエンティストはこう考える」ではそういった事例が紹介されています。

音楽推奨ベンチャーのムードロジックでは、個々のユーザーに探求と深掘りのバランスをある程度決めさせている。具体的には、いつも聴いているタイプの音楽を提供しつづ けるか、まったく新しいジャンルの音楽にも触れさせるかをユーザーに選んでもらっている。(略) 「安全」設定では、あまりバリエーションをつけず、ユーザーが好むと予測された楽曲のみ を流す。一方「冒険」設定では、ユーザーが好む可能性はあるが、好まない可能性もある、なじみの ないタイプの楽曲も流す。設定を選ぶのはユーザーであり、その選択はわれわれがムードロジックの アルゴリズムを改善するための新たなデータとなる。

「安全」に振らずに済むデータドリブンマーケティング

ここでマーケッターの立場からすると、「安全」に振るのが社内への説明責任の観点でも容易です。 データのない中で「冒険」に振ることは自分の立場を危うくするリスクすらあり、なかなか難しい訳です。

しかし一方で、「安全」に振ることは袋小路に迷い込む選択肢でもあります。

  • エンドユーザーのLTVや購入単価を上げない選択肢であり、
  • また競合の多いレッドオーシャンで戦う選択肢でもある

ためです。

こういった選択を避けるための処方箋は、結局、データです。 「冒険」に振って出した思いがけないマーケッターの提案に対し、消費者はその場では購入しなくても興味を持ち、結果、1ヶ月後に購入をしてくれるかもしれません。 これまではできていなかった、そういった投資のリターンの「見える化」により、はじめてデジタルマーケッターは顕在化しているニーズの刈り取りだけではなく、潜在ニーズに対するナーチャリングに取り組むことができるのではないでしょうか。 これはエンドユーザーにとっても、商品・サービスとの思いがけない出会い、引いてはセレンディピティをも、もたらすものです。

マーケティングオートメーションやCCCMの思想は、こういった観点でも不可欠のもののように思います。

併せて読みたい

アマゾノミクス データ・サイエンティストはこう考える

アンドレアス・ワイガンド/土方 奈美 文藝春秋 2017年07月28日
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by ヨメレバ