TOKYO MARTECH BLOG

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「Progressive Web Apps」はエンゲージメントを加速するか - その1 -

2018年3月にiOS 11.3でサポート開始となり、にわかに大きな注目を集める「Progressive Web Apps」。 しかし、その以前より既に(主にGoogle社の地道な広報によって)目立った事例も報告されはじめています。

Progressive Web Apps」とはなんなのか、どういったマーケティングにおいて有用なのかを知っておくことは、今後のマーケティングコミュニケーションチャネルを検討するうえでも必須でしょう。

利用の広がる「Progressive Web Apps」(略して「PWA」)

Progressive Web Apps」とは、最新の標準ウェブ技術を用いることで、オフラインやプッシュ通知といったこれまでよりも一次元上のユーザー体験をもたらすウェブアプリのことです。(必ずしもデスクトップのウェブアプリや、ページ遷移を使ったサーバーサイドでレンダリングされるアプリを除外するものではない) 1

PWA

Googleが公開しているデモ

つまり、PWAの仕組みを使うことで、

  • スマホのホームスクリーンに起動アイコンを追加する
  • オフラインでもコンテンツを表示する
  • スマホのホームスクリーンに起動アイコンを送る

といった、スマホアプリのような機能や動作をWebサイトで実現することができます。

ビジネスにおける成果

このPWA、iOSによるサポート発表前から、既に目立った成果も報告されてきました。

iOSによるサポート

そして、アップルが2018年3月30日に配信したiOS 11.3でPWAを使えるようになりました。

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これにより、iPhone普及率が高い日本でも、PWAの導入によって受けられる便益は格段にアップしたといえるでしょう。

「PWA」の歴史

Progressive Web App」という言葉がはじめて登場したのは、Service Workerの発案者であるAlex Russell氏による記事です。 そこでは「PWA」は下記のように紹介されています。

プログレッシブウェブアプリケーションは、すべての適切なビタミンを服用したばかりのウェブサイトです。 2

当時オフラインやプッシュ通知など、モバイルウェブを飛躍的に進化させる画期的な機能が次々と追加されていた状況において、このムーブメントを呼称するための言葉が求められていました。 それに応えるのが「Progressive Web App」 - 漸進的な強化(「Progressive Enhancement」)を通じたユーザーエクスペリエンスの提供 - だったわけです。

この歴史的背景からもわかる通り、「PWA」は全く新しい枠組みや技術を指す言葉ではありません。 むしろ、デスクトップアプリケーションやモバイルアプリケーションに似たWebアプリケーション機能を作成するベストプラクティスのセットなのです。

なぜ「PWA」が必要か

ネイティブアプリ/ウェブアプリをめぐる課題

私たちが「PWA」を必要とするのは、現在ネイティブアプリ/ウェブアプリにおいて下記のような課題に直面しているためです。

  1. ウェブサイトの読み込みが遅い:ウェブサイトの速度が遅すぎる場合、ユーザーの53%は3秒で「閉じる」ボタンをクリックしてしまうと言われます。

  2. 導入ハードル:人々はネイティブアプリをインストールしたくありません。平均的なユーザーは1か月で0アプリケーションをインストールします。

  3. ユーザーエンゲージメント:ユーザーは自分の時間の80%をトップ3のネイティブアプリに費やしていると言われます。

  4. インターネットの速度:これは海外のユーザーにサービス提供する場合特有の事情ですが、世界の人口の60%がまだ2Gインターネットを使用している中、コミュニケーションチャネルの提供においてデータサイズやオフラインへの対応は大きな課題となります。

「PWA」がいかに課題を解決するか

PWAは下記の通り、これらの問題を解決するのに役立ちます。

  1. 高速:データをキャッシュすることで、高速なエクスペリエンスを一貫して提供可能

  2. インストールが不要:設定に余分な時間がかかることも、ストレージ容量を使うこともなく、サイトにユーザーがアクセスすれば機能。いっぽうユーザーのホーム画面にアイコンとして追加してもらうことも可能

  3. エンゲージメント:ユーザーに通知を送ることができるので、ユーザーに通知してアプリを利用を促進可能

  4. ネットワーク障害への対応:PWAはオフラインでも稼働可能。また、ネットワーク障害時にユーザーにメッセージを表示するなどの対応が容易

またそれ以外にも下記のような特長があります。

  • 検索エンジン対応:PWAアプリ内のコンテンツは、検索エンジンが容易に発見可能

  • アップデートの提供が容易:ネイティブアプリのようなストアの審査がない

  • ハードウェアの機能にアクセス可能:位置情報やデバイスを振動させる機能などが、既に大半のブラウザーでサポート

まとめ

アプリかウェブか。過去を振り返ると、インターネットのスタートからこの綱引きが歴史を作ってきました。

これまで多くのプラットフォーマーがインタラクティブなコンテンツを提供するためのアプリ基盤を提供していきました。 [^2]

しかし、これらの多くは決して成功したとは言えません。

いっぽうウェブに過大に投資した企業もありました。典型的なのはFacebookでしょう。

そこにはアプリ・ウェブそれぞれへの、過度の希望と(それが満たされなかった結果としての)失望の波があったように思います。

アプリかウェブかという選択はア・プリオリに定まるものではなく、ビジネスのコンテキストやエンドユーザーのユースケースに応じて、適切なエンドユーザーとのコミュニケーションチャネルを選定すべきです。

そのための1つの選択肢を提供するのがPWAであり、PWAの利用をめぐる環境が整備されることは、インターネットにおけるコミュニケーションを新たな地平に導くものと期待しています。

「PWAがどういった技術により構成されているのか」「ビジネスドメインごとに、どういったPWAの活用方法があるのか」については、後日さらに詳しく見ていきたいと思います。

参考