TOKYO MARTECH BLOG

MarTechのトレンドや要素技術、各種サービスについて取り上げて紹介していきます。

プラットフォーム時代のマーケティング戦略

「プラットフォーム」に注目が集まっています。GoogleAmazonFacebookからUberAirBnBに至るまで、急成長を遂げた企業の成功の礎となってきたプラットフォームというビジネスモデルはテクノロジーの世界にとどまらずヘルスケア、教育、エネルギー、政府といった、より幅広い経済的、社会的領域の変革を担うようになっており、デジタルマーケティングにおいても避けられないものになりつつあります。

プラットフォームとは

Marketing Strategy Consistency

※出典:Marketing Strategy Consistency by Illia Yakovlev - Dribbble

パイプライン型ビジネス

従来の一般的なビジネスでは、生産者が製品(モノ)やサービスを生産し、消費者に届けます。

このようなビジネスをParker、Van Alstyne、Choudaryらはプラットフォーム・レボリューション PLATFORM REVOLUTION 未知の巨大なライバルとの競争に勝つためにで「パイプライン型ビジネス」と呼んでいます。直線的につながったプロセスをコントロールすることによって価値を生み出すためです。

プラットフォーム型ビジネス

これに対して、プラットフォームとは、商品やサービス・情報を集めた「場」を提供することで利用客を増やし、市場での優位性を確立するビジネスモデルです。 オンラインだけでなく、証券取引所や青果市場のようなオフラインのビジネスにも共通するものであり、誰もが一度は利用したことがあるサービスと言えるでしょう。

こういったプラットフォーム型ビジネスが今やさまざまな業態を席巻しています。

20世紀型マーケティング戦略の限界

このような状況のなかで、マーケティング戦略も再考が必要となっています。

マイケル・ポーターの「ファイブ・フォース」モデル

従来型ビジネスにおいては、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーターが説いた、競争における「ファイブ・フォース」モデルが、戦略思考の世界を席巻してきました。

ポーターのモデルでは、あるビジネスの戦略的ポジショニングに影響を及ぼす、5つの競争要因 を特定している。それは、

  • 市場への新規参入者の脅威
  • 代替製品やサービスの脅威
  • 買い手の交渉力
  • サプライヤーの交渉力
  • 業界内の競争関係の激しさ

戦略の目的は、当該事業の周りに堀を設けて攻撃を受けないようにし、これら5つの競争要因をコントロールすることにあります。

このモデルでは、自身では破滅的競争を避けつつ、バリューチェーン内の他のプレイヤーには破滅的競争を促すことで、自社の利益を最大化していきます。 企業の優位性は、防御用の堀を作り出す業界構造の中にある。そのおかげで、市場を細分化し、製品を差別化し、リソースをコントロールし、 価格競争を避け、利幅を守ることができるのです。 企業は何十年間も「ファイブ・フォース」モデルに基づき、どの市場に参入し、どのタイプの製品イノベーションを追いかけるべきか、どのサプライチェーン戦略を使うべきか、といった意思決定の参考にしてきました。

この「ファイブ・フォース」モデルの前提となっているのが、従来の製品市場がはっきりと区切られていることです。 また、顧客の力やサプライヤーの力といった5つの競争要因は、それぞれ別々に管理・検討すべき事象とみなされています。

「ファイブ・フォース」モデルの限界

それとは対照的に、プラットフォーム市場では、参加者間の境界線を曖昧にし、それによってプラットフォーム上で価値あるインタラクションを増やしていくことが必勝戦略となります。

  • 競争がゼロサム・ ゲームだとする従来の経営戦略における暗黙の前提は、プラットフォームの世界ではほぼ通用しません。
  • プラットフォーム企業は競争のルールをひっくり返し、経営の影響が企業の境界線の中 から外へと移っています。このため、企業はもはや単独ですべての新しい機会をつかむ必要はありません。むしろ、最高の機会のみを追いかけながら、エコシステムのパートナーが他の機会をつかむのを手伝い、共同で生み出す価値をパートナー全員と共有することができます。

プラットフォームがパイプライン型ビジネスを飲み込む

このようにして支配的になったプラットフォームが、パイプライン型ビジネスを飲み込むような動きも始まっています。

  • エクスペディアなどのオンライン旅行代理業(OTA)は、従来の店舗におけるパッケージ旅行販売業に取って代わり始めています。
  • Amazonは自社ブランド品をプライベートブランドで売ることをはじめましたが、これは一種の「プラットフォームによるパイプライン武装」とも言えるでしょう。

プラットフォームにどう対処するか

ではこのような世界において、従来の「パイプライン型ビジネス」のマーケッターはどのようにマーケティング戦略を構築・実施していけば良いのでしょうか。

顧客との関係性に注力する

持続可能な優位性が幻想にすぎない世界では、企業にとって顧客との関係が唯一、長続きする価値の源泉となります。

例えばスティーブ・ デニングは、戦略の目的は競争を避けることだとするポーターの前提の弱さを強調し、それよりも事業の目的は「顧客創造」だとするピーター・ドラッカーの言葉を重視しています。

顧客との強い関係性を維持している企業はプラットフォームとの交渉においても有利に立つことができます。 例えばゲームメーカーのジンガは、一時期Facebook上でユーザー情報の共有やゲーム収益の分配などをめぐって強い交渉力を持ち、Facebookとの強い対立関係にありました。

自らプラットフォーム化する

プラットフォーム時代における競争優位をつくるために、パイプライン型ビジネスの運営企業自身がプラットフォーム化するという選択肢もあります。 これは「パイプラインによるプラットフォーム武装」と言えます。

妹尾堅一郎氏の分類に従い 1 、プラットフォームのタイプごとにその方法を見ていきましょう。

交流型

「交流型」は多くの人々が交流するための場の提供を価値とするようなプラットフォームを言います。例えばSNSなどがその典型です。

例えばSAPは、提供している開発者にお互いの質問に答えるよう動機づける社会的通貨の仕組みを提供することで、部分的に「交流型」のプラットフォームを取り入れています。 開発会社の従業員が質問に答えて獲得するポイントは、法人アカウントに入ります。そのアカウントが指定レベルに達するとSAPはその企業が選んだ慈善団体に寄付をする、という仕組みです。 このシステムにより、SAPの技術サポート費用は600万〜800万ドル節約されたとされています。

交換型

「交換型」はプラットフォームの両側に、価値を提供したい作り手Nと価値の提供を受けたい書いてNがプラットフォームの上で価値交換を行うようなプラットフォームを言います。

例えばAppleは、AppStoreを提供することで価値を提供したいアプリディベロッパーと、アプリを利用したいエンドユーザーとの価値交換の場を提供し、それまでのパイプライン型ビジネスのみからプラットフォーム型ビジネスの担い手に進化しました。

交差型

「交差型」は、既存のパイプライン全体の中の1つの工程/機能をプラットフォーム化するというものです。

例えば日本交通の「JapanTaxi」アプリは日本交通のタクシーだけでなく、他社のタクシーも呼ぶことができます。これはタクシーにおける「配車」というバリューチェーンにおけるプラットフォーム化といえます。

まとめ

すでに通販やソフトウェア、旅行、不動産などの業界で見られつつあった、パイプライン型ビジネスとプラットフォーム型ビジネスが片方で強調しながら、片方ではしのぎを削り合うような構造が、今後さらにより多くの業態で見られることとなるでしょう。

もちろんプラットフォームの上に乗ってパイプライン型ビジネスを動かすこともできます。 しかし主導権を握ることができなければ、エコシステム全体における分け前は限られることとなります。

マーケッターにとっては、これまでのパイプライン型ビジネスにおけるベストプラクティスに思考を閉じることなく、プラットフォーム型ビジネスの潮流を踏まえたマーケティング戦略を立案・実施していかなければいけない時代がやってきたと言えそうです。

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参考